
住宅ローン金利の上昇は売却価格にどう響くか|変動1%台で買主の予算はいくら減るか
2026年9月、大手銀行が住宅ローンの変動金利を引き上げました。売主にとって金利は「自分が借りる話」ではなく「買主がいくら出せるか」の話です。金利が0.5%上がると買主の借入可能額は一律8%減ります。それでも成約価格が下がっていない理由と、影響が価格より先に売却期間に現れる仕組みを、試算とともに整理します。
Conone編集部
不動産査定の専門チーム
2026年9月、大手銀行が住宅ローンの変動金利を引き上げました。金利のニュースは通常「これから家を買う人」や「すでに借りている人」に向けて語られますが、家を売る側にとっても無関係ではありません。むしろ直接的です。買主が銀行から借りられる金額が減れば、あなたの物件に出せる金額も減るからです。この記事では、金利が動いたときに買主の予算がどれだけ変わるのかを具体的な金額で示し、それが売却の現場でどう現れるのかを整理します。
いま金利はどこにいるのか
2026年9月から、大手銀行が変動型の最優遇金利を引き上げました。引き上げ幅はいずれも0.250%で、日本銀行が6月に決めた政策金利の引き上げを反映したものです。固定型はさらに先行して上昇しています。
| 銀行 | 9月からの金利 | 引き上げ幅 |
|---|---|---|
| 三菱UFJ銀行 | 1.195% | +0.250% |
| 三井住友銀行 | 1.525% | +0.250% |
固定10年は大手5行がそろって引き上げ、14か月連続で過去最高を更新しています。長らく0.5%を下回る水準が当たり前だった変動金利が1%台に乗ったことは、住宅購入の資金計画にとって節目にあたります。
売主にとって金利は「買主の予算」の話
自分が住宅ローンを借りていなければ金利は関係ない、と考えてしまいがちです。しかし中古住宅の買主のほとんどはローンを利用します。金利が上がると、同じ月々の返済額で借りられる金額が減ります。つまり、あなたの物件を検討する人の予算そのものが縮みます。
金利が0.5%上がると、買主の予算は8%減る
買主が住宅ローンを組むとき、実際に基準にするのは「毎月いくらまでなら払えるか」です。そこで、月々の返済額を固定したまま金利だけを変えて、借りられる金額がどう変わるかを計算しました。返済期間35年・元利均等返済の場合です。
| 月々の返済額 | 金利0.5% | 金利1.0% | 金利1.5% |
|---|---|---|---|
| 10万円 | 3,852万円 | 3,543万円 | 3,266万円 |
| 12万円 | 4,623万円 | 4,251万円 | 3,919万円 |
| 15万円 | 5,778万円 | 5,314万円 | 4,899万円 |
| 18万円 | 6,934万円 | 6,377万円 | 5,879万円 |
- 金利0.5%4,623万円
- 金利1.0%4,251万円
- 金利1.5%3,919万円
金利が0.5%上がると借入可能額は372万円減ります。注目すべきは、この減少率が月々10万円の人でも18万円の人でも一律8.0%になることです。買主の年収や返済能力にかかわらず、市場全体の予算が同じ割合で縮みます。
−8.0%
金利0.5%上昇時
買主の借入可能額
−372万円
月々12万円返済の買主
0.5%→1.0%の場合
−171万円
さらに0.25%上がると
1.0%→1.25%の場合
4,000万円の物件なら、実質320万円の値下げ圧力
金利0.5%の上昇は、買主から見れば予算が8%減ることと同じです。4,000万円で売り出している物件にとっては、320万円の値下げに相当する圧力がかかっている状態になります。物件そのものの価値は何も変わっていないのに、買える人の数と出せる金額が減ります。
それでも成約価格が下がっていない理由
ここまでの計算だけを見ると、金利上昇によって中古住宅の価格は下がるはずです。ところが実際には、首都圏の中古マンションの成約単価はバブル期の最高値を上回り、東京都区部では1平方メートルあたり136万円という水準に達しています。買主の予算が縮んでいるのに価格が下がらないのは、価格を押し上げる力が同時に働いているためです。
価格を支えている力
- 建築コストの高止まりで新築価格が下がらず、中古に需要が向かう
- 都市部の用地不足で新規供給が増えにくい
- 共働き世帯の増加でペアローンによる借入額が伸びている
- 売り物件の数が少なく、買い手が選べる状態にない
価格を押し下げる力
- 金利上昇で買主の借入可能額が縮む
- 固定金利は14か月連続で最高を更新し、資金計画が組みにくい
- 価格水準が高すぎて、そもそも検討対象から外れる層が増える
- 都心の超高額帯では、すでに売り出し価格の調整が始まっている
現状は前者が後者を上回っている状態です。ただし「すべてが上がり続ける」局面からは変化しており、価格帯や立地によって動きが分かれ始めています。全体の統計が上昇していることと、自分の物件が高く売れることは同じではありません。
影響は「価格」より先に「期間」に現れる
金利上昇の影響を成約価格の統計で確認しようとすると、判断が遅れます。統計に現れるのは、売買契約が成立して集計されたあとだからです。実際の売却現場では、価格が下がるより先に、別の形で兆候が出ます。
買主の予算が縮む
金利が上がった時点で、同じ月々返済額で借りられる金額が減ります。これは即座に起こります。買主本人は「予算内で探している」つもりでも、その予算の上限が下がっています。
内見は入るが、決まらない
最初に気づく兆候物件情報を見て問い合わせる人の数は変わりません。実際に見に来る人もいます。しかし資金計画の段階で届かないことが分かり、申し込みに至らない。「反応は悪くないのに決まらない」という状態が続きます。
売却期間が伸びる
成約しないまま掲載期間が長引きます。長期間売れ残っている物件は、それ自体が買主に不安を与え、さらに敬遠されるという循環に入ります。
値下げ交渉に応じることになる
ここでようやく成約価格に現れます。つまり統計に出るのは、個別の売却現場で起きたことから数か月遅れたあとです。
確認すべきは成約統計ではなく、自分の物件の反応
売り出してから内見の数と申し込みの数を分けて記録してください。内見が入っているのに申し込みがない状態が続いているなら、価格が買主の予算上限を超えている可能性があります。市場全体の統計を待つ必要はありません。
売るか、待つかの判断軸
住み替えなら、売りと買いの両方が動く
金利が上がると、売却価格には下押し圧力がかかりますが、次に買う物件の価格にも同じ力が働きます。さらに自分が新たに借りるローンの金利も上がります。売却価格だけを見て「待とう」と判断すると、購入側の条件悪化を見落とします。住み替えは差し引きで考えてください。
買い替え先が現金なら、売却は早いほうが有利
次の住まいをローンを使わずに用意する場合、金利上昇のデメリットだけを受けることになります。この場合、市況を待つ理由は乏しくなります。
期限がある売却は、市況を読む意味が薄い
相続空き家の3年期限、転勤の時期、離婚に伴う財産分与など、動かせない期限がある場合は、市況を待つ選択肢が実質的にありません。限られた期間内で最も高く売る方法に集中したほうが結果は良くなります。
「待てば上がる」は、地価と金利のどちらに賭けるかの話
地価が上がり続ければ待つほうが有利ですが、金利が先に上がれば買主の予算が縮んで相殺されます。どちらが速く動くかは事前に分かりません。待機している間の固定資産税、管理費、修繕積立金も費用として積み上がります。
日本銀行の金融政策決定会合は年8回
政策金利の変更は金融政策決定会合で決まり、変動金利はそれを受けて見直されます。会合は原則として年8回、2日間の日程で開催され、結果は2日目に公表されます。売却の時期を検討している場合、次回以降の会合日程を確認しておくと、金利が動くタイミングを事前に把握できます。
まとめ
- 2026年9月から大手行が変動金利を0.250%引き上げ、1%台に乗った
- 金利が0.5%上がると、買主の借入可能額は返済額にかかわらず一律8.0%減る
- 月々12万円を返済できる買主で、借入可能額は372万円減る
- 4,000万円の物件にとっては320万円の値下げ圧力に相当する
- それでも成約価格が下がらないのは、建築コストと供給不足が価格を支えているため
- 影響は価格より先に「内見は入るが決まらない」「売却期間が伸びる」という形で現れる
- 住み替えの場合は売却と購入の両方に金利が効くため、差し引きで判断する
金利が動く局面では、「いくらで売れるか」を早めに把握しておくことが判断の前提になります。買主の予算が縮んでいる状況では、相場から離れた売り出し価格が売却期間を大きく引き延ばすためです。
この記事の内容について
掲載している金利は2026年9月時点で各行が公表した最優遇金利です。実際に適用される金利は審査結果や商品によって異なります。借入可能額の試算は返済期間35年・元利均等返済による概算で、実際の融資額は金融機関の審査基準(審査金利、返済負担率など)によって決まります。
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