
共有名義の不動産を売る方法|全員の同意が取れないときの選択肢と持分売却の実際
相続で兄弟共有になった実家、離婚後も共有のままの自宅。共有名義は「売りたい人が売れない」状態を生みます。全員の同意で売る場合に3,000万円控除が人数分使えること、同意が取れないときの4つの選択肢、持分だけを売ると価格が3〜5割に下がる理由、共有物分割請求の期間と費用まで、判断に必要な事実を整理します。
Conone編集部
不動産査定の専門チーム
相続で兄弟3人の共有になった実家。離婚したあとも夫婦の共有名義のままになっている自宅。共有名義の不動産は、持っている全員が「いつでも売れる」と思っていることが多いのですが、実際には反対する人が1人いるだけで売却が止まります。一方で、全員の同意が取れる場合には、単独名義よりも税制上有利になる場面があります。この記事では、共有名義で何ができて何ができないのかという前提から、同意が取れないときの選択肢とそれぞれの現実的な結果まで、順に整理します。
共有名義で何ができて、何ができないか
共有名義の不動産は、行為の重さによって必要な同意が変わります。「自分にも持分があるのだから自由にできる」わけでも、「何をするにも全員の同意が要る」わけでもありません。まずこの区分を押さえると、自分が今どこで詰まっているのかがはっきりします。
| やりたいこと | 必要な同意 | 具体例 |
|---|---|---|
| 保存 | 単独でできる | 雨漏りの修繕、不法占拠者への明渡し請求、相続登記 |
| 管理 | 持分の過半数 | 3年以内の賃貸借、リフォームなどの軽微な変更 |
| 変更・処分 | 共有者全員の同意 | 売却、建替え、取り壊し、大規模な用途変更 |
| 自分の持分だけを売る | 単独でできる | 持分1/3をそのまま第三者へ譲渡 |
2023年4月の民法改正で「過半数でできること」が増えた
改正前は形状や効用を変える行為がすべて全員同意でしたが、2023年4月1日施行の改正民法で「軽微な変更」は持分の過半数で決められるようになりました。外壁の塗り替えや設備の更新といった、価値を大きく変えない工事が該当します。ただし売却は改正後も全員同意のままです。
全員の同意が取れるなら、通常の売却が圧倒的に有利
共有名義の売却でまず検討すべきは、全員が合意して物件をまるごと市場に出す方法です。手間は一番かかりますが、手取りは他のどの方法よりも大きくなります。理由は価格だけではありません。税制上、共有はむしろ有利に働きます。
3,000万円特別控除は「共有者1人につき」使える
マイホームを売ったときの3,000万円特別控除は、共有名義の場合に共有者全員で3,000万円ではなく、要件を満たす共有者1人につき最高3,000万円です。夫婦で2分の1ずつ共有している自宅なら、合計で最大6,000万円の譲渡所得を控除できます。単独名義であれば3,000万円が上限なので、共有であること自体が節税になっている構図です。
3,000万円
単独名義の控除上限
所有者1人ぶん
6,000万円
夫婦2人の共有名義
1人につき3,000万円
9,000万円
兄弟3人の共有名義
各自が要件を満たす場合
要件は共有者ごとに判定される。全員が使えるとは限らない
控除の可否は共有者一人ひとりについて判断されます。マイホーム特例の場合、その物件に住んでいなかった共有者は対象外です。相続で取得したものの一度も住んでいない兄弟がいれば、その人だけ控除が使えません。また確定申告書は共有者が各自で提出する必要があります。誰か1人がまとめて申告することはできません。
譲渡所得は持分割合で分けて計算する
売却代金も取得費も譲渡費用も、それぞれの持分割合で按分してから各自の譲渡所得を計算します。3,000万円で売れて持分が3分の1なら、その人の収入金額は1,000万円です。取得費が不明で概算取得費(売却代金の5%)を使う場合も同じく按分後の金額に対して適用します。税率の判定に使う所有期間も共有者ごとに見るため、相続で取得した人と当初から持っていた人で税率が変わることがあります。
同意が取れないときの4つの選択肢
反対している共有者がいる場合、取れる手段は大きく4つです。上から順に、手取りが多く関係も壊れにくい順に並べています。
1. 他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう
住み続けたい共有者がいるなら最も現実的です。第三者に売るより高い価格がつきやすく、共有関係も解消できます。価格の根拠として査定書を用意し、持分割合を掛けた金額をベースに交渉します。買い取る側に資金がない場合は、その持分を担保にした融資が使えることもあります。
2. 相手の持分を自分が買い取る
1の裏返しです。自分が単独所有になれば、その後は自由に売却も賃貸もできます。相続直後で相続税の申告期限(10か月)が迫っている場合は、代償分割としてこの形にまとめると手続きが一度で済みます。
3. 自分の持分だけを第三者に売る
他の共有者の同意なしに単独でできますが、価格が大きく下がります。買い手はほぼ共有持分専門の買取業者に限られ、その後の展開も自分ではコントロールできません。詳しくは次の章で扱います。
4. 共有物分割請求(協議・調停・訴訟)
裁判所を使って共有状態そのものを解消する方法です。最終的には必ず決着しますが、時間と費用がかかり、結果として競売になる可能性もあります。他の手段が尽きたときの選択肢です。
持分だけを売るといくらになるか
「持分3分の1なら、市場価格の3分の1で売れる」と考えてしまいがちですが、そうはなりません。実務で使われる目安は次の式です。
共有持分の買取価格の目安
市場価格 × 持分割合 × 30〜50%。買い手にとっては、自分の判断で建替えも売却もできず、他の共有者と方針が対立するリスクを抱える資産です。その不自由さの分が価格から差し引かれます。
- 全員の同意を得て通常売却(持分ぶん)約1,500万円
- 他の共有者に買い取ってもらう1,200万円前後
- 持分を買取業者へ売却(評価割合50%)約750万円
- 持分を買取業者へ売却(評価割合30%)約450万円
同じ持分でも、売り方によって手取りが3倍以上変わります。持分売却は「早く現金化できる」代わりに、この差額を対価として支払う方法だと理解しておく必要があります。
持分を売った先で起きること
持分を買い取った業者は、残った共有者に対して持分の買い取りを持ちかけるか、応じられない場合に共有物分割請求訴訟を起こすのが一般的です。結果として不動産全体が競売にかけられ、住んでいた共有者が退去を迫られるケースがあります。あなた自身は現金を得て共有関係から抜けられますが、残された家族との関係は事実上そこで終わります。売る前に、他の共有者に買い取りの意思を確認する手順を必ず踏んでください。
共有物分割請求の実際
話し合いで解決しない場合、共有者はいつでも共有物分割請求ができます(民法256条)。手続きは3段階で進み、どこかで合意できればそこで終わります。
共有者間の協議
期間は当事者次第まず当事者どうしで分割方法を話し合います。裁判所を使う前提として必要な段階です。合意できれば分割協議書を作成し、登記まで進めます。ここで決着するのが費用・時間の両面で最善です。
共有物分割調停
3〜6か月簡易裁判所または地方裁判所で、調停委員を交えて話し合います。訴訟と違って非公開で、当事者の実情に沿った柔軟な解決ができます。調停が成立すれば訴訟は不要です。
共有物分割請求訴訟
半年〜1年以上、争点が多ければ2年超地方裁判所に提訴し、裁判所が分割方法を決めます。判決が出れば必ず共有状態は解消されますが、方法を選ぶのは裁判所であって当事者ではありません。控訴されればさらに長期化します。
裁判所が選ぶ3つの分割方法
| 方法 | 内容 | 選ばれやすい場面 |
|---|---|---|
| 現物分割 | 土地そのものを持分に応じて分筆して分ける | 広い土地で、分けても各区画が使える場合 |
| 価格賠償(全面的価格賠償) | 1人が全部を取得し、他の共有者に持分相当額を金銭で支払う | 建物があって分けられず、取得希望者に支払い能力がある場合 |
| 換価分割(競売) | 競売にかけて売却代金を持分割合で分ける | 現物分割も価格賠償もできない場合の最終手段 |
2023年の改正で「価格賠償」が条文に明記された
従来は判例で認められていた全面的価格賠償が、2023年4月施行の改正民法258条で明文化されました。建物付きの不動産で「誰か1人が取得して他に金銭を払う」という決着が取りやすくなっています。
競売になった場合の金額
競売の落札価格は市場価格を下回るのが通常で、7割程度が一つの目安とされます。そこから訴訟費用も差し引かれます。弁護士費用は50〜150万円程度、不動産鑑定が必要になれば30〜60万円程度が加わります。共有物分割請求は「必ず決着する」代わりに、手取りが最も小さくなりやすい方法です。
共有者が見つからない・判断できない場合
同意が取れないのではなく、そもそも相手と話ができないケースがあります。この場合は通常の交渉ではなく、法律で用意された手続きを使います。
所在が分からない共有者がいる
- 裁判所の決定を得て、所在等不明共有者の持分を他の共有者が取得できる(民法262条の2・持分取得)
- 裁判所の決定を得て、所在等不明共有者の持分を含めて第三者に売却できる(民法262条の3・持分譲渡権限の付与)
- いずれも2023年4月1日施行。それ以前は所在不明者が1人いるだけで売却が事実上不可能でした
- 手続きには不在者の探索と供託が必要で、申立てから決定まで数か月かかります
共有者が認知症などで判断できない
判断能力を失った人が行った売買契約は無効になるおそれがあるため、成年後見人を選任したうえで後見人が代わりに手続きします。さらに、その不動産が本人の居住用である場合は、売却に家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。後見人が付いていれば自由に売れるわけではない点に注意してください。申立てから選任まで通常2〜4か月かかります。
時間が経つほど不利になる
共有を放置することの本当のコストは、固定資産税でも管理の手間でもありません。選択肢そのものが減っていくことです。
次の相続で持分が細分化する
兄弟3人の共有物件は、それぞれに子が2人ずついれば次の代で6人以上の共有になります。全員の同意という条件は、人数が増えるほど成立しにくくなり、面識のない親族が共有者になれば交渉自体が難しくなります。共有は「今が一番人数が少ない」状態です。
相続開始から10年で主張できなくなるものがある
2023年4月施行の改正民法により、相続開始から10年を過ぎた遺産分割では、特別受益や寄与分を主張できなくなります。「自分は親の介護をした」「兄は生前に住宅資金を援助してもらった」という事情が考慮されず、法定相続分での分割になります。相続人全員の合意があれば例外的に考慮できますが、揉めている状況では期待できません。
登記の義務化で放置のコストが上がった
2024年4月から相続登記が義務化され、正当な理由なく3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象です。さらに2026年4月からは住所・氏名の変更登記も義務化され、変更から2年以内に申請しないと5万円以下の過料の対象になります。名義を曖昧にしたまま放置する選択肢は、実質的になくなりました。
まとめ
- 売却には共有者全員の同意が必要。ただし自分の持分だけなら単独で売れる
- 全員の同意が取れるなら通常売却が最も有利。3,000万円控除は共有者1人につき最高3,000万円使える
- 持分だけの売却は市場価格×持分割合の30〜50%が目安。手取りが3倍以上変わることがある
- 持分を売った先で分割請求訴訟や競売になり、住んでいる共有者が退去を迫られる場合がある
- 共有物分割請求は調停で3〜6か月、訴訟なら半年〜2年超。弁護士費用は50〜150万円程度
- 所在不明の共有者がいても2023年4月以降は裁判所の手続きで売却できる
- 共有者の人数は増えることはあっても減らない。動くなら早いほうが選択肢が多い
共有名義の不動産は、まず「今の市場価格がいくらか」を全員が同じ数字で共有するところから話が動き始めます。金額の認識がずれたまま話し合っても、誰かが損をしていると感じて合意に至りません。持分の買い取り価格を提示するときも、根拠になる査定額が必要です。
この記事の内容について
税制・法制度は本記事公開時点(2026年9月)の情報です。個別の事情による適用可否や、訴訟の見通しについては、税理士・弁護士・司法書士などの専門家にご確認ください。
今すぐ無料でAI査定を試してみませんか?
最短1分で、あなたの物件の推定価格を確認できます。